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2016年2月23日 とても冷たい空飛ぶ円盤

アルマ望遠鏡とIRAM望遠鏡の観測によって、若い星の周りの惑星形成円盤外縁部に含まれる大きな塵(ちり)の粒子の温度測定に初めて成功しました。「空飛ぶ円盤(flying saucer)」と名付けられた天体のデータを斬新な方法で解析することにより、研究チームは塵が-266℃であることを突き止めました。これは予想されていたよりもずっと低温でした。この結論は、従来の惑星形成モデルを書き換えるほどの衝撃を与えるものです。

ステファン・ギョートー氏(仏・ボルドー天文台)率いる国際チームは、地球から約400光年のへびつかい座ロー星の星形成領域にある若い星、2MASS J16281370-2431391の周りの大きな塵の粒子の温度を測定しました。

この星はガスと塵の円盤に囲まれています。円盤内では、惑星が作られる初期の段階にあるため、そのような円盤は原始惑星系円盤と呼ばれています。この円盤を私たちはほぼ真横から見ており、可視光で撮影されたその姿から「空飛ぶ円盤」と呼ばれています。

研究者はアルマ望遠鏡を使って、若い星を取り巻く円盤中の一酸化炭素原子からの電波を観測しました。観測データから非常に鮮明な画像を得ることができ、その結果として研究者は妙なもの、つまり「負の信号」を発見しました。通常、負の信号は物理学的に成り立たないものですが、今回の場合は理由があります。そしてそこから驚くような結論が導き出されました。

論文の筆頭著者のステファン・ギョートー氏は、次のように解説しています。「黒く何もない夜空を背景にすると、この円盤は見えません。しかし、へびつかい座ロー星の星雲の輝きを背にシルエットとして見ることができます。この星雲の輝きは薄く広がっているためアルマでとらえることはできませんが、円盤はその輝きを吸収します。負の信号は、円盤の一部は背景よりも冷たいということを意味しています。地球はまさに『空飛ぶ円盤』の影に入っているのです。」

研究チームは、アルマによる円盤の測定と、スペイン・IRAM 30m望遠鏡による背景の星雲の観測を組み合わせました。 その結果、中心の星から150億kmの位置にある塵の粒子がたった-266℃(絶対零度よりわずかに7度高いだけ)しかないことが導かれました。中心の星から150億kmという値は太陽と地球の距離のおよそ100倍と同じであり、太陽系ではカイパーベルト(海王星よりも外側にある小天体の帯)にあたる領域です。同種の天体で、1mmほどの大きな塵の粒子の温度を直接測定したのは、今回が初めてのことです。

最新の惑星形成モデルで予測されていた温度は-258℃~-253℃で、今回の測定(-266℃)は、予測よりも低いものでした。この不一致を説明するためには、大きな塵の粒子は現在の仮説とは違う性質を持っている、と考えなくてはいけません。

「円盤の構造についての今回の発見を理解するためには、私たちはこんな低温になれる塵の性質について、もっともらしい仮説を見つけなければなりません。いくつかアイディアはあります。例えば、温度は粒子の大きさに依存し、大きな粒子は小さなものよりも冷たいのだろう、といったものです。しかし、仮説を確かなものにするにはまだ証拠が少なすぎます」と、共著者のエマニュエル・ド・フォルコ氏(仏・ボルドー天文台)は補足します。

もし、原始惑星系円盤の塵がこれほど低温であることがありふれた特徴なのだとしたら、円盤がどのように形成され進化していくのかについて、いろいろと考え直さなくてはいけない事態に直面します。

塵の性質の違いは、例えば、塵の粒子がぶつかり合うときに何が起きるのか、そして惑星形成において塵がどんな役割を果たすのか、に影響を及ぼします。今回の観測結果を説明できるように塵の性質を考え直すことがこの観点で深刻な影響を及ぼすかどうかは、現段階で推定することはできません。

現在知られている他のより小型な円盤を考える上でも、塵の温度が低くなることは大きな影響があります。なぜなら、塵の量を計算する時にはあらかじめその温度を仮定しておかなくてはいけないからです。ある物体から出る電波は、高温になるほど強くなります。このため、仮定する温度が高ければ少量の物質でその強さの電波を出せることになります。 逆に、もし小型の円盤が現在の予測よりも低温な粒子で構成されているとしたら、その小さな円盤は実際にはこれまでの想定よりも多くの物質を含んでおり、そのため中心星から比較的近いところで巨大惑星が形成されうることを意味しています。

より詳しい理解のためには、今後さらなる観測が必要です。しかし、今回アルマによって発見された冷たい塵は、原始惑星系円盤を理解する上で重要な知見を与えてくれました。

この観測成果は、S. Guilloteau et al. "The shadow of the Flying Saucer: A very low temperature for large dust grains" として、2016年2月に発行された天文学専門誌「アストロノミー・アンド・アストロフィジクス」 に掲載されました。

画像は、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した、へびつかい座ロー星の星形成領域の若い星(2MASS J16281370-2431391)の周りの原始惑星系円盤です。
Credit: Digitized Sky Survey 2/NASA/ESA

とても冷たい空飛ぶ円盤

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