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2016年1月15日 アルマ望遠鏡が解き明かす惑星形成の現場

研究者はアルマ望遠鏡の観測によって、4つの若い星の周りのガスと塵(ちり)の円盤の隙間に明確な違いがあることを発見しました。今回の新たな観測は、木星の数倍の重さの惑星が最近、円盤の中で作られたことを明示しています。星の周りのガスの調査はまた、惑星の性質についての手がかりを提供してくれます。

惑星は非常に多くの星の周りで見つかっていますが、どのような環境下で、どのように惑星が形成されるのかは、完全にわかっているわけではありません。その謎に答えるために、研究者は惑星の形成現場、つまり若い星の周りで回転しているガスと塵の円盤を研究しています。しかし、これら円盤は小さく地球から遠くにあるため、謎を明らかにするにはアルマ望遠鏡の力が不可欠でした。

星を取り巻くガスと塵の円盤にはいくつかの種類がありますが、その中に「遷移円盤(transitional disk)」と呼ばれる特殊な円盤があります。遷移円盤では、中心星のすぐ近く、つまり円盤の中央部に驚くほど塵がない領域があります。この謎めいた隙間の成因については、主に2つの説が提唱されてきました。1つは中心星からの強い恒星風や強力な放射によって、星を取り巻くガスや塵を吹き飛ばしたか壊してしまったという説。これは「光蒸発」と呼ばれます。もう1つは、成長中の重い原始惑星が星の近くを公転することで軌道上の物質をきれいに払ったという説です。このような惑星は直接観測することが難しく、従来のミリ波での観測では、円盤内部の惑星形成領域の鮮明な画像を得ることができなかったため、2つの説を検証するに至りませんでした(参考:2013年6月7日付プレスリリース ファイル「アルマ望遠鏡が発見した彗星のゆりかご」 )。また、他の研究では、これらの円盤のガスの量を見積もることができませんでした。

研究チームの代表は、オランダ・ライデン天文台のニンケ・ヴァン・デル・マレル氏です。比類ない感度と画像の鮮明さを持つアルマ望遠鏡によって今、研究チームは4つの遷移円盤ついて、今までになく精密なガスと塵の分布図を描くことに成功しました。観測対象は、SR 21、HD 135344B(SAO 206462とも呼ばれます)、DoAr 44、Oph IRS 48です。これによって研究者は円盤の隙間の成因についての2つの説(光蒸発、あるいは原始惑星)に、初めて答えを出すことができるかもしれません。

新しい観測画像は、塵では隙間に見える部分に大量のガスがあることを示しています。遷移円盤のガスは水素が主成分ですが、一酸化炭素(CO)分子の観測によってその存在が示唆されます。しかし、このガスの円盤にもまた隙間があったことは、研究チームを驚かせました。ガスの円盤の隙間は、塵の隙間と比べて3倍小さいものでした。これは、2つ説のうちのひとつを支持します。すなわち、できたばかりの重い惑星が公転する中でガスを払っていった一方、塵の粒子はその外側にとどまっていた(ダスト・トラップ)というシナリオです。(ダスト・トラップについて詳しくは、2013年6月7日付プレスリリース ファイル「アルマ望遠鏡が発見した彗星のゆりかご」 をご覧ください。)

「塵の隙間にあるガスの存在については、以前の観測ですでにヒントを得ていました」と、ニンケ・ヴァン・デル・マレル氏は述べます。「しかし、アルマが他の望遠鏡と比較できないほど素晴らしい詳細な円盤全体の物質の画像を見せてくれるまでは、従来の光蒸発による説を否定することはできませんでした。はっきりした隙間は木星の数倍の重さの惑星の存在を明示しており、その惑星が円盤を払うことで空洞ができているのです。」


若い星の周りの遷移円盤の想像図。円盤中の塵の分布を茶色、ガスの分布を青色で示しています。
Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/M. Kornmesser

注目すべきは、今回の観測は現在のアルマの分解能のたった10分の1しか利用せずに行なわれたことです。この観測が行われた時には、約半数のアンテナはまだ調整段階にありました。ゆくゆくはより多くの遷移円盤について観測し、それらが同じ原始惑星説を支持するかどうかを確かめる必要があります。あるいは、もしかするとアルマの観測は、複雑な惑星形成の過程に重要な新しい見解をもたらしてくれるかもしれません。

「これまでに研究された遷移円盤は、塵の分布に大きな隙間があるものは同様にガスの分布にも隙間がありました。今後はアルマ望遠鏡によって、円盤の中のどこで、いつ巨大惑星が誕生するのかを見つけ、その結果を惑星形成モデルと比較することができます」と、オランダ・ライデン大学、ドイツ・マックスプランク天体物理研究所のエヴィン・ヴァン・ディショック氏は語ります。今までの研究事例としては、HD 142527(参考:2013年1月4日付プレスリリース ファイル「アルマ望遠鏡が見つけた『惑星のへその緒』」 、2014年1月17日付プレスリリースファイル 「アルマ望遠鏡が見つけた巨大惑星系形成の現場」 )の他、J1604-2130の遷移円盤が挙げられます。「現在の望遠鏡ならば、惑星を直接観測することに手が届きつつありますし、E-ELT(European Extremely Large Telescope)のような次世代の望遠鏡の建設も進んでいます。アルマは次世代望遠鏡が見る場所に照準を合わせているのです。」

この研究成果は、"Resolved gas cavities in transitional disks inferred from CO isotopologs with ALMA", by N. van der Marel, et al.として、2015年12月発行のAstronomy & Astrophysicsに掲載されました。

下の画像は、若い星、HD135344Bの周りの遷移円盤(ガス成分を青色に着色、塵成分をオレンジ色に着色)です。画像下のスケールは、海王星の軌道直径(60天文単位)を示しています。
Credit ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)

アルマ望遠鏡が解き明かす惑星形成の現場

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