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2015年7月01日 アルマ望遠鏡が初期銀河に漂う最初の「炭素のけむり」を発見

研究者は銀河内部の運動や化学的性質を知ろうと、星々の間にまき散らされている物質を研究しています。しかし、宇宙誕生から間もない初期の宇宙で炭素が放つ電波の痕跡を見つけようという試みは、現在までうまくいっていません。この広大な宇宙空間を超えて十分な量の星の材料を観測するには、さらに数十億年手前の天体でないと不可能であろうとみられていました。

しかしアルマ望遠鏡による新しい観測によって、ビッグバンからわずか10億年ほどしかたっていない頃の「普通の」銀河の中に漂う炭素原子のかすかな痕跡が、いとも簡単にとらえられました。これは非常に初期の宇宙では、普通の銀河でさえすでに炭素で満ちていたことを示唆しています。一方でそれから数十億年後の銀河ほど化学的に進化していませんでした。後の時代の銀河内では、電離した炭素の多くは塵の表面に集積して一酸化炭素のような単純な分子を作っています。

「ビッグバンの頃の原始的なガスから一体どのようにして、現在宇宙の至る所で見られるような重たい原子や複雑な分子になったのでしょうか。私たちはそれを知りたいのです」と、科学誌「ネイチャー」掲載論文の筆頭筆者でカリフォルニア工科大学(米・パサデナ)の天文学者、ピーター・カパック氏は述べます。「アルマ望遠鏡完成前は、とても若く、とても遠い銀河を直接観測する方法はありませんでした。なぜならば、炭素からの電波放射は弱すぎてとらえられなかったからです。」

アルマ望遠鏡はその比類なき感度によって、電離した炭素が放つかすかなミリ波の「輝き」をとらえました。それは9つのとても遠く、宇宙が今の年齢のたった7%だった頃の、とても若い銀河からやってきたものです。炭素などの原子は、明るく重い星からの強力な紫外線放射によって電離します。

最初の銀河が生まれたときは、よく「宇宙の夜明け」と例えられます。その頃、星々の間のほとんどは、ビッグバンによって生まれた水素とヘリウムで満たされていました。重い星が超新星爆発によってその短くも輝かしい一生を終わらせるとき、次の時代が始まります。星の中心で作られた炭素、シリコン、酸素といった重い物質を星間空間にまき散らすのです。

「電離した炭素の特定のスペクトルは、銀河の中で水素やヘリウムよりも重い物質がどのように増加してきたかを研究する上で、強力なツールになるかもしれないと長い間考えられてきました。それはまた、初期銀河におけるガスの運動を調べる唯一の方法です」と、共著者である米国国立電波天文台(ニューメキシコ州・ソコロ)のクリス・カロリ氏は述べています。「この論文は、この方法が確かに使えることを明らかに証明しており、また、こういった研究におけるすばらしい将来を示しています。」

炭素は他の物質と結びつきやすく、単純なものから複雑なものまでさまざまな分子を形作ります。このため、炭素は電離したばらばらの状態で長時間存在することはできません。従って、星間空間の他の重い元素と比べて、ずっと少量でしか見つからないのです。

これは、電離した炭素がまだ進化していない比較的若い銀河の優れた目印になることを示しています。「この変わった状態の炭素があるということは、そこには他の重い元素が少ししか存在しないということを示しています」とカパック氏は述べます。「今回観測した銀河とその20億年後の銀河の特徴はきわめて対照的です。たった20億年で銀河は重い元素の塵で満ち、電離した炭素はずっと少なくなっていたのです。」

研究者はまた、同じ観測データを速度計のように使って、銀河の中を最速で秒速380kmの速度で移動しているガスを発見しました。「これほど遠い銀河でのガスの速度を測定するのは、以前は不可能でした。最初の銀河がどのように集まって進化したのか、今回の観測はそれを理解するための新しい扉を開いたのです」と、カパック氏は述べています。

アルマ望遠鏡で観測したガスの速度は、数十億年後の星を作り出している普通の銀河におけるガスの速度と似ていて、現在近くの宇宙でもよく見られます。アルマのデータはまた、これらの遠い銀河が、それぞれ太陽の100億から1000億倍の質量を持つことをつきとめました。それは私たちが住む天の川銀河の質量に匹敵します。

初期宇宙に多くある銀河は穏やかで、後の時代のものよりも質量が小さいと考えられてきたため、この結果は研究者を驚かせました。

アルマ望遠鏡のデータは、初期宇宙が私たちが現在考える普通の大きさの銀河を生み出せることを明らかにしました。その一方で、電離炭素が豊富にあって塵が目立って少ないことは、それらが進化の過程において非常に未熟な段階にあることを示しています。

この研究の中で、研究者はおよそ130億光年彼方の典型的な星形成銀河を9個選びました。その銀河は宇宙進化サーベイ「COSMOS(コスモス)」から選ばれ、ハワイにあるケックⅡ望遠鏡の分光器DEIMOS(デイモス)によってその距離が測定されました。

アルマ望遠鏡はチリ、アタカマ砂漠にあり、宇宙の原子や分子から発せられた波長数ミリメートルのかすかな電波をとらえることができます。過去の非常に遠い銀河についての研究では、今回観測された電離炭素からの電波は検出されませんでした。その理由は、観測対象が衝突をしている「普通ではない」銀河であり、電離した炭素からのかすかな信号がさえぎられていたかもしれないためです。今回の成果は、アルマ望遠鏡の一部のアンテナを使用し、それぞれの対象についておよそ20分未満の観測で得られました。アルマのすべてのアンテナを使用する今後の観測では銀河の形成とその化学的な組成についてさらにはっきりとした描像を示すことができるでしょう。

下の図は、ハッブル宇宙望遠鏡によって得られたCOSMOSの画像内に、アルマ望遠鏡で観測された銀河のうち4つの画像を表示しています。
Credit: ALMA (NRAO/ESO/NAOJ), P. Capak; B. Saxton (NRAO/AUI/NSF), NASA/ESA Hubble

アルマ望遠鏡が初期銀河に漂う最初の「炭素のけむり」を発見

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