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2015年4月13日 赤ちゃん太陽系に複雑な有機分子を発見:生命前駆物質は宇宙に豊富に存在?

生命の構成要素である複雑な有機分子が、若い星を取り巻く原始惑星系円盤の内部で初めて検出されました。これは、私たちの地球と太陽を生み出した条件が宇宙に固有のものではないことを改めて示すものです。

アルマ望遠鏡による観測によって、100万歳の若い星であるMWC 480を取り巻く原始惑星系円盤に、複雑な炭素系分子であるアセトニトリル(CH3CN)が大量に含まれていることが明らかになりました。アセトニトリルと、より単純な「いとこ」にあたるシアン化水素(HCN)の両方が、新しく生まれた星を取り巻く円盤の外縁部の冷たい領域で発見されたのです。ここは、私たちの太陽系におけるエッジワース・カイパーベルト(海王星軌道以遠にある、氷の微惑星や彗星が存在する領域)に類似していると研究者たちが考えている領域です。

彗星は、私たちの太陽系の初期の化学的な組成を、惑星形成の時代からそのままに保持しています。太陽系の外縁部から来た彗星や小惑星は、生命の誕生に必要な水や有機分子を若い地球にもたらした、と考えられています。

Nature誌に発表された論文の筆頭著者で、ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの天文学者であるカリン・ウーベル氏は、「彗星や小惑星の研究によって、私たちの太陽と惑星を産んだ原始の太陽系星雲は、水と複雑な有機化合物に満ちていたことがわかっています」と述べます。「私たちは今、同じ化学組成が、私たちが住む太陽系と似通った惑星系が作られる他の場所でも存在するという証拠を掴んだのです。」ウーベル氏はまた、MWC 480で見つかった分子が、太陽系内の彗星でも同様の濃度で検出されていることはとりわけ興味深い、とも述べています。

MWC 480は太陽の約2倍の質量を持ち、約455光年離れたおうし座の星形成領域に位置しています。その周囲の円盤は、塵やガスからなる冷たい暗黒星雲から形成されたばかりの、きわめて若い段階にあります。アルマ望遠鏡や他の望遠鏡を用いた観測では、まだその円盤の中に惑星形成の兆候を検出するには至っていません。しかし、同じような進化段階にあるおうし座HL星の円盤に惑星形成の兆候が見られたことから、より高解像度の観測を行えば同じような構造が発見されるかもしれません。
参考:ファイル プレスリリース 『アルマ望遠鏡、「視力2000」を達成!-- 史上最高解像度で惑星誕生の現場の撮影に成功』

冷たく暗い星間雲がシアン化合物含む複雑な有機分子の非常に効率的な工場であることは、以前から知られていました。このシアン化合物の中でもアセトニトリルは、タンパク質の構成材料であるアミノ酸を形成するために欠かせない炭素-窒素(C-N)結合を持つことから、特に重要な化合物であるといえます。しかしながら、化学結合は衝撃波と放射により簡単に壊されてしまうため、形成されたばかりの惑星系の激しい環境の中で、こうした複雑な有機分子が一般的に形成され、生き残ることが出来るかどうかは、これまでよくわかっていませんでした。

今回、高い感度を持つアルマ望遠鏡により、これらの有機分子が激しい環境で単に生き残っているだけではなく、むしろ豊富に存在していることが明らかになりました。

重要なのは、アルマ望遠鏡が検出した分子が、星間雲の中に発見されるよりもはるかに豊富に存在していたことです。研究者によると、MWC 480の周りには、地球のすべての海洋を十分に満たすことができる程のアセトニトリルが見つかりました。この事実は、原始惑星系円盤が比較的速い時間スケールで、とても効率的に複雑な有機分子を形成することができることを物語っています。

分子が常に壊される環境でも、分子の形成がそれよりも速いペースで進めば全体として分子は豊富に存在できることになります。またこれらの分子は、中心の恒星からおよそ45億~150億キロメートル(注:海王星の軌道半径は約45億キロメートル)離れた、円盤の比較的穏やかな環境の領域で検出されました。これは、私たちの太陽系の基準では信じられないほど遠い距離ですが、MWC 480が太陽の2倍の質量をもつ大きな星だということを踏まえれば、ちょうど彗星が形成される領域にあたります。

この惑星系が進化するにつれて、こうした有機分子は彗星や他の氷天体の中に安全に隔離され、生命を育むのにより適した環境へと運ばれていく可能性がある、と研究者は推測しています。

「私たちの太陽系が岩石惑星と豊富な水を持っていることは必ずしもユニークではない事を、太陽系外惑星の研究によって我々は知っています。今回、有機化合物もユニークではないことがわかりました。我々はもう一度、自分たちが特別ではないことを学んだのです。宇宙における生命の存在を考える上で、これは素晴らしいニュースです。」と、ウーベル氏は結論づけています。

アルマ望遠鏡は、同種のものでは世界で最も洗練された強力な観測装置であり、星間分子が自然に放っている微弱なミリ波の放射を検出することができます。これまでの観測では66台のアンテナの一部のみが使用されており、アルマ望遠鏡は低い解像度に設定されていました。今回の天体や他の原始惑星系円盤について、アルマ望遠鏡のフル機能を用いた研究がさらに進めば、恒星や惑星の化学的・構造的な進化について、より詳しいことが明らかになるでしょう。

この研究は、Oberg et al. "The comet-like composition of a protoplanetary disk as revealed by complex cyanides" として、2015年4月9日発行の科学誌『ネイチャー』に掲載されました。

下の図は、MWC 480を取り巻く原始惑星系円盤の想像図です。
Credit: B. Saxton (NRAO/AUI/NSF)

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