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2014年3月10日 氷天体の衝突が作り出す謎のガス雲—がか座ベータ星を回る円盤に潜むガスをアルマ望遠鏡が発見

アルマ望遠鏡を使った観測により、がか座ベータ星を取り巻く固体微粒子の円盤の中に一酸化炭素ガスのかたまりが発見されました。円盤内のガスは星からの光によって速やかに破壊されてしまうと考えられているため、今回の発見に研究者たちはたいへん驚いています。氷でできた小さな天体、たとえば彗星のような天体が頻繁に衝突し破壊されることによって、継続的にガスが供給されていると研究者たちは考えています。この発見は、2014年3月6日発行の科学誌「サイエンス」に掲載されました。


がか座ベータ星は、日本からは南の空非常に低くに見える星です。この星は以前から、非常に若い惑星系の典型例として研究者の注目を集めてきました。この星から12億kmのところには惑星(がか座ベータ星b)がひとつ回っていることがわかっており、また固体微粒子でできた円盤構造が初めて見つかった星の一つでもあります[注1]

アルマ望遠鏡による新しい観測により、この円盤が一酸化炭素のガスで満たされていることがわかりました。生まれたばかりの星の周囲には、ガスや固体微粒子からなる円盤(原始惑星系円盤)が作られます。この円盤の中で数百万年以上かけて惑星が作られ、ガスや微粒子は次第に少なくなっていきます。がか座ベータ星はこのように比較的進化の進んだ段階にあると考えられており、これまで円盤の中のガスは散逸してしまっていて微粒子しか存在しないと考えられていました。高い感度を持つアルマ望遠鏡により、円盤内に一酸化炭素がはじめて検出されたのです。一酸化炭素は人間にとっては有害なガスですが、がか座ベータ星の場合はこの惑星系が将来生命を育む場所になるかもしれないことを示しています。一酸化炭素ガスの供給源と考えられる彗星には、おそらく水の氷も含まれているでしょう。水を大量に含んだおびただしい数の彗星が惑星に衝突すれば、その惑星に生命を育む元となる水がもたらされると考えられるのです。

しかし、円盤内に一酸化炭素分子があったとしても、星の光によっておよそ100年程度で簡単に分解されてしまうと考えられます。100億年にも及ぶ星の一生からすれば、100年という期間はほぼ一瞬と言っていい短さです。私たちは、幸運にもこの一瞬を目撃しているのでしょうか?

「私たちがそこまで幸運でないとすれば、一酸化炭素はがか座ベータ星のまわりで継続的に供給され続けているのだと考えられます。」と、この論文の筆頭著者で合同アルマ観測所に勤務するウィリアム・デント氏はコメントしています。「若い惑星系における一酸化炭素の最大の供給源は、氷でできた天体の衝突です。彗星サイズの天体から大きいものでは惑星サイズのものもあるかもしれません。」

しかも、衝突・破壊の確率は非常に高いようです。「私たちが観測した量の一酸化炭素ガスを生み出すには、驚くほど速いペースで天体が衝突しなくてはいけません。平均して5分に1個のペースで彗星が破壊されている計算になります。」この論文の共著者で、アメリカ航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙飛行センターのアキ・ロバージ氏はこのように推測しています。「この数の衝突を可能にするには、とても密度の高い彗星の集合体が必要です。」

今回のアルマ望遠鏡による観測で明らかになったのは、この一酸化炭素の存在だけではありません。電波源の場所と速度を同時に測定できるアルマ望遠鏡の強みを活かし、一酸化炭素ガスが円盤の中にどのように分布しているかを明らかにすることができました。一酸化炭素ガスは円盤の中にまんべんなく分布しているのではなく、一か所に固まっていたのです。このかたまりは星から130億km、太陽から海王星までの約3倍の距離のところに位置していました。なぜガスがこのように星から遠くにまとまっているのかは、まだ謎のままです。

図1

図1. がか座ベータ星を取り巻く円盤の一酸化炭素分子輝線の強度分布(上)と、その速度構造を手掛かりに構築した円盤内の一酸化炭素の分布の鳥瞰図(下)。一酸化炭素分子の大きなかたまりが2時方向に見えています。
Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO) and NASA's Goddard Space Flight Center/F. Reddy
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「このガスのかたまりは、若い惑星系の外縁部で何が起きているのかを知る手掛かりになります」と、論文の共著者でケンブリッジ大学のマーク・ウィアット氏は語ります。ウィアット氏によれば、このようなガスのかたまりが作られた原因はふたつ考えられるとのことです。「土星くらいの質量をもった未発見の惑星の重力によってガスが集められているのかもしれません。あるいは、火星サイズの氷惑星ふたつが衝突した結果としてこれほどの量のガスが一度にまき散らされたのかもしれません。」

いずれの場合にしても、この星のまわりには未発見の惑星がある可能性が高いということになります。「一酸化炭素の発見は、始まりにすぎません。氷でできた天体からは、より複雑な有機分子につながるような分子も放出されるかもしれないのです」と、ロバージ氏は語っています。

がか座ベータ星については、アルマ望遠鏡によるさらなる詳細観測も予定されています。この星で起きていることを知ることは、私たちの住む太陽系が作られたころの様子を知ることにもつながります。


今回の研究成果は、 W. Dent et al. "Molecular Gas Clumps from the Destruction of Icy Bodies in the Pictoris Debris Disk"として、科学誌「サイエンス」2014年3月6日号に掲載されました。

[1] 多くの星のまわりに、固体微粒子でできた円盤(デブリ円盤)が見つかっています。この円盤は、星を回る小天体が次々に衝突して連鎖的に破壊されて作られる微粒子でできています。こうした連鎖的な衝突破壊は、映画「ゼロ・グラビティ」で宇宙ステーションが遭遇したものに似ています。

図2. アルマ望遠鏡の観測成果をもとに描かれた、がか座ベータ星の周囲の想像図。左に青白く光るのが、がか座ベータ星。氷天体の衝突によって一酸化炭素が大量にまき散らされ、未発見の惑星(左下)の重力によって掃き集められている様子が描かれている。
Credit: NASA's Goddard Space Flight Center/F. Reddy
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アルマ望遠鏡、互いに傾いた原始惑星系円盤を連星系で発見

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