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電波干渉計のしくみ

アルマ望遠鏡は、広大な土地に66台以上の電波望遠鏡を並べ、これらの受信データを組み合わせることで仮想的に一つの巨大な望遠鏡としています。このように複数の電波望遠鏡を組み合わせた仕組みを、電波干渉計と呼びます。では、干渉計とは一体どういうものなのでしょうか。また、なぜこんなにも多くの望遠鏡を使うのでしょうか。

電波望遠鏡の基礎知識

望遠鏡では、どれだけ対象を細かく見ることが出来るかを「分解能」で表しますが、これは主鏡(対物レンズ)の口径に比例します。ですから、例えば土星の輪をもっと明瞭に見てみたいと思ったら、まずは口径を大きくする必要があります。可視光を観測する「ハッブル宇宙望遠鏡」は、この主鏡が2.4メートルもあるので、細かい構造まで捉えた美しい天体の姿を捉えることができるのです。
電波望遠鏡でも、遠くの天体を明瞭に見るためには主鏡(アンテナ)の直径を大きくする必要があります。ただし、分解能は「波長を口径で割った値」でも決まるため、波長が可視光のおよそ1000倍も長いサブミリ波でハッブル宇宙望遠鏡と同様の分解能を得ようと思ったら、2.4m×1000=2400mほどの口径が必要になってしまいます。
単純に考えると地球上ではそんな巨大なアンテナは作れませんね。ですが、これを解決するアイデアが、「干渉計を使った開口合成」という仕組みなのです。

コラム

いわゆる鮮やかな天体写真ではない事を意外に思われるかもしれませんが、電波望遠鏡で得られるのは、「アンテナを向けた方角から、どんな周波数の電波が、どれだけの強さで来ているか」という情報なのです。みなさんが普段目にするようなサーモグラフィのような電波望遠鏡の観測イメージは、この情報を膨大に集め、解析した結果なのです。

干渉計のしくみ<その1> 天体の位置を正確に知る

離れた位置にあるアンテナ2台を使って、その距離分の直径をもつ望遠鏡に相当する解像度を得る仕組みを、電波干渉計と言います。まずは、干渉計で実現される解像度で、天体の位置を正確に知ることからはじめます。

2つのアンテナは少し離れて設置されていますが、どちらも天体Xに向いています。向きが同じであれば2つの観測データは同じだと思うかもしれませんが、微妙に異なっているようでした。では、どこが違うのでしょうか。

光も電波も速度は一定なので、もし2台のアンテナが天体Xから正確に同じ距離ならば、電波はピッタリ同時に到着します。ここで、2台のアンテナを離して置くと、左の図のように直角三角形の「辺C」の分だけ片方のアンテナが遠くなり、電波の到着がそのぶん遅れます。天体Xから発せられたある一瞬の電波は、2台のアンテナに少しだけずれて届くのです。

それぞれのアンテナに届いた電波はデジタル信号に変換され、波形の山と谷を目印に重ね合わせながら、波形を最も強めあう場所=最も近い波形を探します。波同士を重ね合わせることによって、山と山が重なると高くなり、山と谷が重なると打ち消しあう現象を干渉といいます。
2台のアンテナで最も近い波形が現れるまでの時間差が明らかになると、「辺C」の正確な距離も判明します。アンテナAとBの「距離D」はあらかじめ分かっていますから、結果として、アンテナ1台では分からなかった、天体Xの正確な角度「角度E」を割り出すことができるのです。
このままでは1方向からの角度が分かっただけですが、同じ事をさまざまな位置関係で配置されたアンテナのペアで行い、結果を合成することで、天体Xのさらに詳細な位置を割り出すことができます。

干渉計のしくみ<その2> 天体の詳細な画像を合成する

ものすごい解像度だけれど、顔を撮影すると毛穴の詳細なアップだけで全体像が分からない、そんなデジカメでは使えませんね。遠く離れた位置にあるアンテナ2台だけを使うと、その距離分の直径をもつ望遠鏡に相当する解像度は得られますが、そのままでは先ほどのデジカメと一緒で、全体像がよくわかりません。
当然ですが、アルマ望遠鏡には、この問題を解決するアイデアが取り入れられています。
ひとつが、アンテナの配置や間隔を変えて観測すること。
もうひとつが、地球の自転を利用して観測することです。

たった2台のアンテナでも、時間をかければ巨大なパラボラアンテナの代わりをさせることは可能です。2台の距離や配置を次々に変えて観測結果を合成していけばいいのです。ただ、2台で詳細な観測画像を得ようと思ったら、移動、観測を繰り返す必要があり、その労力は並大抵ではありません。一つの天体を観測するのに、膨大な時間と手間がかかってしまいます。

そこで、ライルがノーベル賞を受賞した、地球の自転を利用する開口合成法の出番です。
私たちは目標の天体Xから見ると、3次元的にくるくる回っています。地球上のアルマ望遠鏡の66台以上のアンテナも、その地球と一緒に位置を変え続けています。天体から見た望遠鏡ペアの位置が自転とともに移動することで、単に66台の望遠鏡で観測する以上に密度を高めることができ、仮想的に非常に大きな望遠鏡を実現することが出来るのです。

アルマ望遠鏡では、最大で直径16kmに66台以上ものアンテナを設置して観測を行いますので、わずか10分程度でも2次元の電波写真を得ることが出来ます。さらに、観測に8時間程度かけた場合は、きわめて精細な画像を合成することができます。地球の自転を利用した「電波干渉計による開口合成法」は飛躍的な画質の向上を可能にし、かつてない鮮明さで未知の宇宙の姿を私たちに見せてくれるでしょう。

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